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(JAPANESE) 著名作家から新進作家まで現代日本の工芸家12人が 工芸の未来を探る

日本の工芸|Future Forward

期間:20151020日(火)〜201627日(日)

New York, NY (September 21, 2015)

ニューヨーク、2015921 − 2015年10月20日から2016年2月7日まで、ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン(MAD)では「日本の工芸|Future Forward」と題し、著名な工芸家から新進作家まで12人の作品を紹介し、今日の日本文化において工芸の役割がどのように変化しているのかを探る展覧会を開催いたします。工芸とは一般に、日本国内の諸地域で発展してきた高度な技術を要する伝統的表現形態を意味します。日本独自の文化と伝統的美意識に深く結びついた工芸は、素材を熟知し、技法に精通するのに何年もの鍛錬が必要とされます。素材と技術が高い水準で調和した時に生まれるモノの状態やそれが作り出す空間の様子を、工芸的な世界と呼ぶこともできるでしょう。

 

工芸は今も長い歴史と伝統に深く根付いています。現代工芸家の多くは伝統の継承に役割を見出し、自己表現や時代に即したグローバルな問題をテーマとすることはありません。しかし本展の出品作品には、伝統を単に受け継ぐのではなく、そこから換骨奪胎し、あるいは徹底的に原理に立ち返ろうという、問題提起の姿勢が見られます。こうした作家たちは工芸の伝統を大切にしながら、同時に「未来」のイメージと向き合うことによって、作品に高度な独創性を表現します。

 

「日本の工芸|Future Forward」展のキュレーションを務める金沢21世紀美術館館長・秋元雄史は、こう語ります。「工芸の核心である優れた技能には、強烈な未来的イメージを創造する可能性が秘められています。本展では伝統的な技術を創造性豊かに用いた作品、自己表現豊かな作品を提示することによって、工芸の現在性と世界性を探ります。」

 

「工芸」の概念が多様化し進化しつつある現代を反映し、 12人の作家の工芸に対するアプローチはそれぞれ異なります。漫画やアニメ、デザイン、現代美術など今日のトレンドに感化されたこれらの作品は、従来の工程や装飾、仕上がり、具象表現などを見直すことによって、伝統的な用途に新しく画期的な形を与えます。こうした独創的作品は美術にも工芸にも共通する要素を備え、工芸の活力を21世紀に拡大展開します。

 

MAD上級学芸員ロナルド・ラバコは、こう語ります。「MADは、美術表現の伝統的なアプローチの流動性と、現代技術との複雑な関係を明らかにすることを目的としています。『日本の工芸|Future Forward』展では、古い歴史と現代社会の交差地点に工芸を捉え、伝統を見直すことによって、工芸に新しい息吹を吹き込む作家たちの作品を紹介します。」

 

プレス内覧会:20151019日(月)午後4時〜530 


出品作家: 

 

青木克世 

ホラー映画に代表される現代日本のサブカルチャーとつながる青木克世の印象的な作品は、ロココ調の装飾と骸骨形状を組み合わせ、表現力豊かな異次元のイメージを喚起する。

 

葉山有樹 

葉山有樹は、古代中国の神話伝説に現れる神獣や装飾要素と現代漫画のキャラクターを取り入れて、近未来の終末的イメージに彩られた物語を描き出す。

 

猪倉髙志 

猪倉髙志はダイナミックにねじ曲がる形態やしなやかな曲線で、器物的機能をほとんど感じさせないまでに作品を展開している。その形状はデジタル加工やジェネラティブ(生成的)デザインを彷彿とさせるが、制作はあくまで練達した手作業で行われる。

 

「雲龍庵」北村辰夫 

北村辰夫の率いる漆工房「雲龍庵」は歴史的に重要な漆芸品を保存・修復し、その中で得た知識と再発見した技法を作品創作に活かし、漆技法の域を拡大して、伝統漆器には見られない形や図柄の作品を展開する。

 

桑田卓郎 

桑田卓郎は、漫画が時に歴史上の人物や出来事を取り上げるように、伝統的な茶碗を現代のポップカルチャー的解釈で制作する。

 

見附正康 

九谷焼の赤絵細描絵付け師・見附正康は、従来全体的な図柄の脇役として使われていた複雑で精緻な幾何学文様を拡大展開し、作品の主題として描き出す。

 

中村康平

伝統的な工芸の器物性や用途を放棄した中村康平の陶芸彫刻は、装飾にビルの解体後の残骸や現代社会の廃棄物を想わせる要素を取り込んで、近未来SFや人類が滅亡しつつある世界を描いたホラーとつながるイメージを展開する。

 

中村信喬 

17世紀まで遡る博多人形作りを継承する中村信喬の様式化された端正な作りの遣欧使節は、伝統工芸と現代彫刻の中間に位置する。

 

野口春美 

野口春美の作る鬼や妖精や動物は、古代のアニミスティックな原型まで戻って工芸を見直すことによって、自己表現の手段を探ろうとする現代工芸の側面を代表する。

 

大樋年雄 

11代続く大樋焼の後継者である大樋年雄は、350年の伝統を踏まえた作品を作りながら、同時に世界各地の大学で実演やワークショップを行い、開かれた場における対話を促すことによって、日本の工芸の文化的・地理的な境界を超えようとする。

 

竹村友里 

竹村友里の茶碗のデザイン性と遊び心に富んだ形や装飾は、現代のファッションやデザインやメディア文化のポストモダン的影響を反映し、同じような引用、参照、編集といったプロセスを通していることを感じさせる。

 

山村慎哉 

山村慎哉は巧みな漆技法と自己表現のバランスを取りながら、素材を自由に選び、新しい形の作品を作り上げる中で、多くの漆芸家を縛り付けてきた歴史と伝統から自己を開放する。

 

 

主催・共催団体、関連書籍、謝辞 

 

「日本の工芸 | Future Forward 」展はミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン(MAD)主催、日本国文化庁および金沢21世紀美術館(金沢芸術創造財団)共催の企画展として、金沢21世紀美術館館長・秋元雄史のキューレーションの下、MAD上級学芸員ロナルド・ラバコおよび準学芸員兼プロジェクト・マネージャー、サマンサ・デ・ティリオがコーディネートしました。作品輸送および旅行諸費用は、日本航空の寛大なご協力で、日本国文化庁および金沢21世紀美術館に提供されました。

 

なお、本展開催を記念して、秋元雄史著、金沢21世紀美術館発行の全138頁オールカラー版展覧会カタログも発売いたします。

 

「日本の工芸 | Future Forward 」展は、数多くの方々のご協力で実現しました。ここにお名前を表し、感謝の意と代えさせていただきます。四代徳田八十吉氏、大西ギャラリー及び大西なな氏、エロール・ラドマン氏、土肥信一氏、日本国文化庁、マーシア及びアラン・ドクター両氏、メアリー・アンド・ジェイムズ・ウォラック財団、日本国総務省、アストロデザイン株式会社、NHKエンタープライズ、シャープ株式会社、在ニューヨーク日本国総領事館、一穂堂ギャラリー、デボラ・バック氏、マサコ及びジェイムズ・シン両氏、ジョーン・マービス氏、ギャラリー91。加えてMAD公式航空会社・KLMオランダ航空のご協力にも感謝いたします。

 

 

関連プログラム 

 

ディストピア的文化を語る

 

1945年8月6日、米軍機が広島に世界で初めて原子爆弾を投下しました。以来数十年間にわたり、日本では工芸を含むあらゆる分野で「近未来世界の崩壊と終末」というテーマが出現してきました。最初は各分野の専門家やファンの間で流行っていたこのテーマは、やがて現代のポップカルチャーの中心に位置する映画や書籍、アートなどでも大幅に取り上げられるようになり、徐々にメインストリーム化していきました。

 

「ディストピア的文化を語る」と題した本展関連プログラムでは、トーク、ワークショップ、映画上映などを通してこうした文化の流れを探り、歴史と文化の関連性を考えます。

 


トーク 

 

現代日本の工芸:未来への展開

2015年10月20日(火)午後7時

聴講無料

 

「日本の工芸|Future Forward」展のキュレーションを務める金沢21世紀美術館館長・秋元雄史を中心に、現代の工芸作家たちが工芸の概念をどのように見直しているかを探ります。青木克世、葉山有樹、猪倉髙志、桑田卓郎、見附正康、中村信喬、大樋年雄、山村慎哉など、本展の出品作家たちも参加し、彼らの作品と他の現代工芸家の作品がどう違い、どういった部分が従来の工芸と一線を画しているのか話し合います。

 

映画上映 

 

2015年11月6日(金)午後7時

入場料:一般
$10、MAD会員および学生$5

1990年制作、監督:黒澤明

上映時間:119分、35mmプリント

 

従来の映画の「型」を破ったオムニバス形式の映画『夢』は、今日では黒澤の後期作品の名作と呼ばれていますが、公開当初はあまり高く評価されませんでした。万華鏡のように煌びやかな精霊の行列、絶望的な登山者、黙々と迫る兵士の亡霊、さらに黒澤と同世代の映画界の巨匠マーティン・スコセッシ演じるヴァン・ゴッホまで、さまざまな人々が登場するこの映画は、光り輝く抽象表現から恐ろしいほどの現実的描写まで、風変わりな夢の世界を描き出します。それぞれのストーリーに共通するのは、巨大化する産業と原子力による崩壊に対する、黒澤の根深い恐怖心と危機感です。

 

A

2015年11月13日(金)午後7時

入場料:一般
$10、MAD会員および学生$5

1998年制作、監督:森達也、主演:荒木浩

上映時間:136分、デジタル映写

 

東京で13人の死者と約6,000人の負傷者を出した地下鉄サリン事件後のオウム真理教を追い、教団と社会との関わりを捉えた森達也監督のドキュメンタリー映画『A』は、近年の日本史上、最も象徴的ともいえるこの事件を個人的な視点から捉え、「世界滅亡」の預言を自らの手で実行するまでに至る信者たちの行動にどのような意味があるのか探ります。教団幹部がなぜこのような事件を犯したのか、その理由は未だに解明されていませんが、教団の広報担当者・荒木浩(当時28歳)が、事件後、マスコミや一般人とコミュニケーションを図ろうとする姿を記録する中で明らかになってくるのは、幹部の行動が招いた結果に巻き込まれて右往左往するひとりの若者の姿です。

 

バトル・ロワイアル

2015年11月20日(金)午後7時

入場料:一般$10、MAD会員および学生$5

2000年制作、監督:深作欣二、出演者:藤原竜也、前田亜希、ビートたけし

上映時間:121分、デジタル映写

 

高見広春の同名小説を原作とした深作欣二監督のカルト映画『バトル・ロワイアル』は、近未来社会を背景とし、無人島に送られて最後の一人になるまで殺し合いを強いられる中学校の1クラスの生徒たちを描きます。深作監督最後の作品となったこの映画は、ハリウッドのヒット作『ハンガー・ゲーム』より10年以上前に制作されており、当時、日本では大ヒットして日本アカデミー賞の最優秀作品賞にノミネートされ、話題賞も獲得しましたが、アメリカでは物議を醸し、2012年まで海賊版でしか手に入れることができませんでした。今日では、近未来の社会情勢と教育制度を絶望的に描いた痛烈な風刺で、日本のポップカルチャーの象徴的作品と評価されています。

 

AKIRA

2015年12月4日(金)午後7時

入場料:一般$10、MAD会員および学生$5

1988年制作、監督:大友克洋、日本語版出演者:岩田光央、佐々木望、小山茉美

上映時間:121分、35mmプリント(英語吹替え版)

 

原作漫画の著者でもある大友克洋が自ら監督を務めたアニメーション映画『AKIRA』は、日本のアニメ界に金字塔を打ち立て、国内外のSF映画のディストピア的未来描写に多大な影響を与えました。ストーリーは、2019年、ネオ東京で軍(アーミー)の研究プロジェクトの秘密を偶然知ってしまった2人の不良少年を追います。暴走族のメンバーたちが政府や軍隊の闇の世界に巻き込まれるにつれ、ネオ東京に大変化をもたらす事件を次々と引き起こし、やがて原爆よりはるかに巨大な、世界崩壊を招きかねない恐るべき威力を目覚めさせてしまいます。

 

ファミリー・プログラム

 

スタジオ・サンデー

2015年12月6日(日)午後2時

参加費:ミュージアム入館料に込み

会場:MAD6階クラスルーム

 

ご家族で「日本の工芸|Future Forward」展を訪れ、さまざまな工芸技法を学んだ後は、粘土や絵の具を使って陶器を彫刻に変身させましょう。

 

「スタジオ・サンデー」は年齢を問わず誰でも参加できるワークショップ。参加費はミュージアム入館料に含まれています。アーティストが先生となり、創作プロセスを説明しながら一緒に制作します。6歳以上なら誰でも参加可能。内容は毎回異なります。

 


ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン(MAD)について 

 

ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン(MAD)は、造形芸術のさまざまな分野において現代作家を支援し、最高レベルの創造性と技術で作品を制作するアーティスト、デザイナー、工芸家を紹介します。1956年、先見的なビジョンをもつ篤志家アイリーン・オズボーン・ウェッブによって設立されて以来、MADは伝統技法から最先端技術まで、材料が作品にたどり着くまでの制作・創作プロセスをすべての面から評価してきました。美術とデザインの境界を超えたアプローチを常に重視してきたMADは、その豊かな経験に基づき、今も、私たちの日常生活を形作る物や環境の裏に潜む優れたワークマンシップを紹介する数々の学芸プログラムを企画しています。21世紀において斬新な創作活動を展開し、文化の流れに影響を与える作家たちには国際的舞台を、そして来場者には高度な技術による制作プロセスと印象深い美術・デザイン作品を直接体験できる各種参加型プログラムを提供します。

 

高解像度イメージは、下記プレス画像アーカイブをご覧ください。

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プレス担当

 

ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン(MAD)

クレア・ラポート(Claire Laporte)/アリソン・アンダーウッド(Allison Underwood)

電話:212.299.7737

電子メール:press@madmuseum.org

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